今年の初め、「中国による外国人就労者のランク付け」のニュースが報じられた。中国が外国人就労に対して、かなり厳しい基準を設けるというこの制度。4月から実施となっているが、実際、中国に住む外国人就労者にどんな影響を及ぼしているのか。
       昨年、中国政府は突然、外国人就労者の管理を厳しくすると発表。外国人就労者をA、B、Cの3ランクに分け、ランクごとに人数を制限していくというものである。おおまかに言うと、次のような分け方となる。

       

       2017年4月以降、外国人就労者をA類(外国ハイレベル人材)、B類(外国専門人材)、C類(外国一般人材)にランク付けし、C類については国による割当管理を実施する。北京市、天津市、河北省、上海市、安徽省、山東省、広東省、四川省、雲南省、寧夏回族自治区では先行して実施し、北京市は2016年12月1日付けで実施する。

       A類は、(1)中国の中央・地方政府の人材計画で選定された者、(2)国際的に公認された実績に関する基準に適合する者、(3)市場動向に基づく奨励類の職位に必要な外国人材、(4)イノベーション・起業人材、(5)優秀な青年人材、(6)ポイント制(後述)で85点以上の者、のいずれかである。

       B類は、(1)学士以上の学位および2年以上の関連実務経験を持ち、一定の基準を満たす者、(2)中国の大学で修士以上の学位を取得した優秀な卒業生、(3)世界ランキング100位以内の外国の大学において学位を取得した卒業生、(4)外国語の教員、(5)ポイント制で60点以上85点未満の人材、のいずれかである。
       C類は、(1)行政機関の許可または授権により雇用した者、(2)中国と外国政府の間の国家間協議に基づき雇用した者、(3)政府間協議に基づいてインターンを行う外国人青年、(4)ハイレベル人材とともに中国に来る家政サービスに従事する外国人、(5)遠洋漁業などの特殊な分野に従事する外国人、(6)季節性労務に従事する外国人、(7)その他、職位の割当管理が行われる外国人、であり、中国の労働市場の需要を満たし、国の政策の規定に適合する臨時的、季節的、特別な技能を持たない、またはサービス的業務に従事する一般外国人とされる。
       企業が人材を中国に派遣する場合、B類以上が望ましく、この一覧は一定の目安となる。自分でも試算してみたが、多くの駐在員はB類にランクされることになろう。A類に分類されるのは、余程の高収入、高学歴、豊富な職務経験を有し、かつ働き盛りで、中国語も堪能なスーパー駐在員である。
       政策の背景には、中国政府が「優秀」と考える人材の流入を促進する一方で、C類に分類される人材の流入を抑制することで、中国国内の一般労働者の雇用を守る目的があろう。広州市などでは不法滞在の外国人が増加し、現地の雇用や治安に悪影響を与えているとの報道がある。さらには、ポイント制では所得が多いほどポイントが加算されることから、収入を事前に申告させることで外国人就労者への課税を強化する狙いもあるのかもしれない。
      しかし、全ての外国人就労者をランク分けすることの是非を含め、今回の政策は上策とはいえない。まず、世界中で高度人材の獲得競争が激化しているなか、A類には各種届出の優先対応などが実施されるというが、魅力ある優遇策ではない。一方で、若くてバイタリティー溢れる現地採用の優秀な外国人材、あるいは、各国で技術者や熟練工として働き、退職後に中国で現地雇用された優秀なシニア層が、C類に分類され、就労ビザの取得が難しくなったりするリスクがある。特に後者は、製造業における安全管理や技術向上に果たしてきた役割は小さくない。一部製造業や一般的なサービス業では、混乱が深まりかねないだけに、今後の動向には注意が必要であろう。